ノボキュアの膵がんを対象とした腫瘍治療電場(TTフィールド)療法の第3相PANOVA-3試験結果を2025年ASCO年次総会で発表
TTフィールド療法とゲムシタビンおよびナブパクリタキセルの併用が、切除不能な局所進行膵腺がん患者を対象とした第3相試験で初めて全生存期間(OS)に対し臨床的に意義があり、統計的に有意な延長を示した
TTフィールド療法のOS延長効果は、生活の質(QOL)の有意な改善および無痛生存期間の延長という、膵がん患者にとって重要な結果により裏付けられた
PANOVA-3試験結果は、ASCOにてレイトブレイキングアブストラクトとして口頭発表され、『Journal of Clinical Oncology』誌にも同時掲載された
スイス・バール–(2025年5月31日)– ノボキュア(NASDAQ:NVCR)は、膵がんを対象とした腫瘍治療電場(Tumor Treating Fields、以下「TTフィールド」)療法の第3相PANOVA-3試験結果を、シカゴで開催中の2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表すると同時に、Journal of Clinical Oncology誌に掲載したことを発表しました。
PANOVA-3試験の研究責任医師で腫瘍内科医のビンセント・ピコッツィ医師は、次のように述べています。「発表したPANOVA-3試験の結果により、TTフィールド療法が局所進行膵がん患者の全生存期間を臨床的に意義がある形で、かつ統計的に有意に延長したことが示されました。特に重要なのは、痛みが進行するまでの期間(無痛生存期間)が延長したことです。痛みは膵がんの特徴的な症状であり、臨床医としてこの治療法が痛みに対処できる可能性を示したことは、非常に励みになります。今回の結果は、TTフィールド療法がゲムシタビンおよびナブパクリタキセルとの併用で、切除不能な局所進行膵がんに対する標準治療となる可能性を示しています。」
第3相PANOVA-3試験では、切除不能な局所進行膵腺がん患者に対し、一次治療として標準治療であるゲムシタビンおよびナブパクリタキセルにTTフィールド療法を併用した治療群と、これらの標準治療単独群とを比較評価しました。本試験は主要目的を達成し、TTフィールド療法を受けた患者群で全生存期間の中央値(mOS)が統計的に有意に延長しました。
ノボキュアの最高医療責任者(CMO)であるニコラス・ルパン医師(医学博士)は次のように述べています。「膵がん患者の多くは診断時にすでに進行期であり、治療が非常に困難です。診断から5年後の生存はおよそ10人に1人にとどまります。ASCOおよびJournal of Clinical Oncology誌で発表された結果は、TTフィールド療法が切除不能な局所進行膵がん患者の全生存期間および無痛生存期間を延長させることを示しました。当社は2025年後半に、TTフィールド療法の市販前承認取得のためのデータを米食品医薬品局(FDA)に提出予定です。」
PANOVA-3試験結果
Intent-to-treat(ITT)集団において、TTフィールド療法をゲムシタビンおよびナブパクリタキセルと併用した患者群の全生存期間中央値(mOS)は16.2カ月であり、ゲムシタビンおよびナブパクリタキセル単独治療群の14.2カ月に比べ、2.0カ月の統計的に有意な延長が認められました(ハザード比[HR]0.82、p=0.039(N=571))。
また、TTフィールド療法とゲムシタビンおよびナブパクリタキセルの併用は、1年生存率および無痛生存期間を含む複数の副次評価項目においても改善を示しました。膵がんは疾患の進行に伴い重度の痛みを引き起こすため、その管理は重要な臨床課題となっています。
- 1年生存率は、TTフィールド併用群で68.1%(95% CI:62.0-73.5)であり、標準治療単独群の60.2%(95% CI:54.2-65.7)と比較し、統計的に有意な改善が見られました(p=0.029)。
- 無痛生存期間の中央値は、TTフィールド併用群が15.2カ月(95% CI:10.3-22.8)、標準治療単独群は9.1カ月(95% CI:7.4-12.7)となり、6.1カ月の統計的に有意な延長が認められました(HR:0.74、95% CI:0.56-0.97、p=0.027)。無痛生存期間は、患者が視覚的スケールで痛みのスコアがベースラインから20ポイント以上増加した時点または死亡までの期間と定義されました。
生活の質(Quality of life:QOL)も副次評価項目として測定されました。QOLは、全患者を対象に欧州がん研究治療機構(EORTC)の生活の質に関する質問票(QLQ-C30)および膵がん特異的な補足票PAN26を使用して解析しました。その結果、全体的健康状態、痛み、消化器症状において悪化のない期間(deterioration-free survival)が、TTフィールド併用群で標準治療単独群と比較して有意に延長しました。QOLに関する詳細な解析結果は、今後の学術学会で発表される予定です。
一方、その他の副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)、局所無増悪生存期間、客観的奏効率、無穿刺生存期間、腫瘍切除可能率については、TTフィールド併用群と標準治療単独群の間に統計的に有意な差は認められませんでした。
TTフィールド療法の忍容性は良好で、新たな安全性上の懸念は認められず、これまでの臨床試験と一貫した安全性プロファイルが確認されました。デバイスに関連する有害事象として最も多く報告されたのは、軽度から中等度の皮膚症状でした。
データ発表および掲載の詳細
PANOVA-3試験(演題番号:LBA 3500)のデータは、局所進行膵管腺がん(LA-PAC)を対象に、腫瘍治療電場(TTフィールド)をゲムシタビンおよびナブパクリタキセルと併用した第3相試験として、消化器がん(胃食道・膵・肝胆道)口頭発表セッションでピコッツィ医師がホールD1にて午後3~6時(現地時間)に発表しました。
また、Journal of Clinical Oncology誌掲載の同試験の論文『腫瘍治療電場(TTフィールド)とゲムシタビンおよびナブパクリタキセル併用による局所進行膵腺がん治療:無作為化・非盲検・ピボタル第3相PANOVA-3試験(Tumor Treating Fields with gemcitabine and nab-paclitaxel for locally advanced pancreatic adenocarcinoma: randomized, open-label, pivotal phase 3 PANOVA-3 study)』は、https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO-25-00746でオンライン公開されました。
ノボキュアの投資家向けイベント
ノボキュアは、口頭発表終了後にピコッツィ医師および同社経営陣を招いた投資家向けイベントを開催します。イベントの詳細およびライブウェブキャストへのリンクは、ノボキュアの投資家情報ページ(www.novocure.com)でご確認いただけます。参加をご希望される方や追加情報が必要な場合は、ノボキュアの投資家向け窓口(investorinfo@novocure.com)までご連絡ください。
膵がんに対するTTフィールド療法の承認申請
および進行中の臨床試験について
ノボキュアは、PANOVA-3試験の結果に基づき、2025年後半に米国において、切除不能な局所進行膵腺がんに対してTTフィールド療法の承認申請を行う予定です。また、欧州連合(EU)、日本、およびその他の主要市場でも同様に承認申請を行う計画です。
さらにノボキュアは現在、第2相PANOVA-4試験において転移性膵がんを対象にTTフィールド療法とアテゾリズマブ、ゲムシタビンおよびナブパクリタキセルを併用した治療法の検討を継続しています。PANOVA-4試験は既に患者登録を完了しており、2026年前半に試験データの公表を予定しています。
PANOVA-3試験について
PANOVA-3試験は、局所進行膵腺がんの一次治療として、腫瘍治療電場(TTフィールド)をゲムシタビンおよびナブパクリタキセルと併用した場合の有効性および安全性を評価するために設計された国際共同、前向き、無作為化、非盲検、比較対照第3相臨床試験です。患者は、TTフィールド療法をゲムシタビンおよびナブパクリタキセルと併用する群、または標準治療単独群のいずれかに無作為に割り付けられました。
主要評価項目は全生存期間です。副次評価項目として、無増悪生存期間、局所無増悪生存期間、客観的奏効率、1年生存率、生活の質、無痛生存期間、無穿刺生存期間、腫瘍切除可能率および毒性を評価しました。
PANOVA-3試験では571名の患者が登録され、1対1の割合で無作為に割り付けられた後、最低18カ月間の追跡調査が実施されました。
PANOVA-4試験について
PANOVA-4試験は、転移性膵がんを対象に、TTフィールド療法とアテゾリズマブ、ゲムシタビンおよびナブパクリタキセルの併用療法の安全性と有効性を評価するために設計された国際共同、多施設、第2相臨床試験です。主要評価項目は疾患コントロール率です。副次評価項目として全生存期間、無増悪生存期間、1年生存率、客観的奏効率、6カ月時点での無増悪生存期間、奏効持続期間および毒性が評価されます。目標登録患者数は76名で、登録はすでに完了しています。
膵がんについて
膵がんは最も致死率の高いがんの一つであり、米国ではがんによる死亡原因の第3位となっています。(i) 全体的ながん罹患率および死亡率は安定または減少傾向にある一方、膵がんの罹患率と死亡率は増加しています。(ii) 米国では年間約67,000人が膵がんと診断されており(iii)、5年相対生存率はわずか13%です。(iv)
膵がんの治療は病期に応じ、手術、放射線療法、薬物療法などを組み合わせて行います。局所進行膵がんで動脈を巻き込んでいるが膵臓外への転移がない患者の場合、標準治療は手術後に化学療法(放射線療法の併用を含むこともある)を行います。しかし、多くの局所進行症例では診断時点ですでに手術不可能であるため、化学療法(放射線療法の有無にかかわらず)が唯一の治療選択肢となります。
腫瘍治療電場について
腫瘍治療電場(TTフィールド)は、がん細胞に対し物理的な力を加えることで、複数のメカニズムを介してがん細胞を死滅させる電場療法です。正常な細胞は分裂速度、形態、電気的特性ががん細胞と異なるため、TTフィールドによる影響をほとんど受けません。TTフィールドの多面的な作用メカニズムは相乗効果をもたらし、化学療法、放射線療法、免疫チェックポイント阻害剤、あるいは分子標的治療との併用によって、前臨床モデルにおいてさまざまな固形がんへの効果が示されています。このような臨床的汎用性から、さまざまな固形がん治療における課題を解決する可能性を有します。
TTフィールド療法およびがん細胞への多面的な作用メカニズムについて、詳しくは公式ウェブサイト(tumortreatingfields.com)をご覧ください。
ノボキュアについて
ノボキュアは、革新的ながん治療法である腫瘍治療電場(TTフィールド)の開発および商業化を通じ、最も治療困難ながん患者の生存期間延長を目指すグローバルなオンコロジー企業です。ノボキュアの市販製品は、一部の国々において成人の膠芽腫(グリオブラストーマ)、非小細胞肺がん、悪性胸膜中皮腫などの治療に対する承認を受けています。同社は、膠芽腫、非小細胞肺がん、膵がんなどの治療におけるTTフィールド療法の応用を探索する複数の臨床試験を実施または完了しています。
ノボキュアのグローバル本社はスイスのバールにあり、米国本社はニューハンプシャー州ポーツマス、研究開発拠点はイスラエルのハイファに所在しています。詳細については、公式ウェブサイト(Novocure.com)をご覧いただくか、LinkedInおよびTwitterで@Novocureをフォローしてください。
将来予想に関する記述について
本プレスリリースには、歴史的事実または現時点での状況に関する記述のほか、将来予想に関する記述が含まれている場合があります。将来予想に関する記述は、将来的な出来事に関するノボキュアの現時点での期待または予測を示すものです。これには、研究プログラムの予想される科学的進展、臨床試験の進捗状況、製品候補の開発、臨床結果の解釈、規制当局による承認の見込み、製造開発と能力、製品の市場見通し、保険適用、第三者機関からの支払い徴収の見込みなど、過去の事実ではないさまざまな事項に関する記述が含まれます。このような将来予想に関する記述は、しばしば「予想する(anticipate)」、「推定する(estimate)」、「期待する(expect)」、「予測する(project)」、「意図する(intend)」、「計画する(plan)」、「信じる(believe)」など、これらと類似の意味を持つ言葉によって特定できます。ノボキュアの実際の業績および財務結果は、経済状況、財政状況、環境問題、規制や政治情勢などの一般的な条件のほか、2025年2月27日に米国証券取引委員会(SEC)に提出したForm 10-Kの年次報告書およびその後の提出書類に記載されているような、同社が直面するより具体的なリスクや不確実性の影響により、これら将来予想に関する記述に示される内容と大きく異なる可能性があります。このようなリスクや不確実性を考慮すると、これらの将来予想に関する記述の一部または全部が結果として正確でない可能性があります。そのため、これらの要因や将来予想に関する記述を過度に信用すべきではありません。またノボキュアは、法律で求められる場合を除き、本リリースに含まれる将来予想に関する記述を更新する意図はありません。ここに記載されている将来予想に関する記述は、本リリース発表日時点でのものです。本記述は、1995年米国民事証券訴訟改革法(Private Securities Litigation Reform Act of 1995)に基づいて行われています。
i 米国がん協会(American Cancer Society)『がん統計・データ 2025年版(Cancer Facts & Figures 2025)』、アトランタ:米国がん協会、2025年発行
Ⅱ 米国がん協会(American Cancer Society)『がん統計・データ 2025年版(Cancer Facts & Figures 2025)』、アトランタ:米国がん協会、2025年発行
Ⅲ 米国がん協会(American Cancer Society)『がん統計・データ 2025年版(Cancer Facts & Figures 2025)』、アトランタ:米国がん協会、2025年発行
Ⅳ 米国がん協会(American Cancer Society)『がん統計・データ 2025年版(Cancer Facts & Figures 2025)』、アトランタ:米国がん協会、2025年発行
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